at a snail's pace

読書と鑑賞の記録

追悼、加納実紀代さん

 女性史研究家の加納実紀代さんが2月22日に亡くなられました。様々な資料の収集と聞き取り調査、有志の研究会での議論を重ね、女性の戦争責任を明らかにするという大変なお仕事をはじめとして、戦争とジェンダーという非常に難しい問題に精力的に取り組まれてきた方です。私にとって『女たちの「銃後」』は忘れられない、衝撃的な読書体験となりました。謹んで哀悼の意を表したいと思います。

 加納さんは歴史研究に情熱を傾ける一方で、新聞への寄稿記事やインタビューなどからはそのまなざしがいつも現在の問題に向けられていたことが分かります。一橋大学の『ジェンダー研究を継承する』アーカイブ特設サイトのインタビュー動画では以下のようにお話しされています。

『銃後史ノート』の刊行のことばに、母たちは被害者だったけれども侵略戦争を支える銃後の女でもあったと、何ゆえにそうでしかあり得なかったのかという、二重性、重層性ですよね。だから私は一方的に加害者だとして糾弾しているわけではなくて、絶対に被害者でもあるわけなので。そういう重層性を持つっているのは、私に言わせれば単なる被害者よりもっとひどいことだと思うのですよね。(中略)やっぱり当時の自分たちがかつての母たちと同じ状況を背負っている、女性としては性役割だとか女らしさを強要される被害者でありつつ、日本人としてはちょうど日本が経済侵略をしていく銃後をまた支えているという二重性がある。そういう自分たちの状況をどうすればいいんだろうと、当事者としての問題意識から、それを明らかにするために現在の状況の中で見回しても見えないというので、毎回母たちの時代、まさに侵略戦争の銃後を支えた女性たちの状況がどういうことであったのかを明らかにすることによって、自分たちの状況も見たい、という。あくまでも現在における自分たちの問題がまずあって、ということですね。(「加納実紀代さんインタビュー② 関連課題を探求するようになったプロセス」より)

 女性史の授業を学生たちにすると、昔に生まれなくてよかったって言うんですよ。今はありがたいことだって……そういう現状肯定のために女性史はあるんじゃない!って(「加納実紀代さんインタビュー⑤ 研究と運動や政治との関係」より)

gender.soc.hit-u.ac.jp

 上記インタビュー動画の紹介や加納さんがWANに寄稿された記事の一覧が、WANの追悼ページに掲載されています。

wan.or.jp